平成21年度 中心市街地活性化シンポジウム
JCG企画室長 岡 正熙
経済産業省主催で平成22年1月19日(火)に開催された掲題のシンポジウムに出席しました。その概要を以下のとおり報告します。
主題となるテーマは、「中心市街地の魅力を高めるために」どうすればよいかということで、基本となる考え方と方針の説明があり、それを受けて数件の事例紹介と加えて講師4人によるパネルディスカッションがありました。
全国の中心市街地、特に商店街がどのような問題に直面しているかを広く知ることが出来、このなかから何らかのビジネスチャンスの発見も期待できるのではないかという印象を受けました。
基調講演として中心市街地活性化策のこれまでの流れと現状及び今後のあり方が解説されました。本件に関する法令等の主なものは、いわゆる「まちづくり三法」と呼ばれる、「中心市街地活性化法」、「大規模小売店舗立地法」および「都市計画法」です。これを商店街のために補完する法律として「地域商店街活性化法」があります。
「まちづくり三法」は平成18年(2006年)に見直しがされました。改正が必要となった背景には、にわかづくりの寄せ集め計画、補助金頼り・採算性無視の事業計画、商業問題への偏重、自治体の及び腰、担い手の不足(TMOへの依存度が高い)などがあります。
改正の中核となることは計画に「重み」を持たせることです。計画には内閣総理大臣の認定が要求されて、「市」の全部局を巻き込んだ総合的な計画でなければなりません。そして「選択と集中」が重視されます。今全国で13,000の商店街があるとされていますが、どこでもすべて一律ではなくて、重点的に相手先を選択することになります。他にポイントとなるところは次のようなものです。
- 中心部への開発・投資の集中。郊外開発規制の表明の義務付け
- エリアの適正化、コンパクト化。実質的な事業が可能なエリア設定
- 商業振興から都市の賑わいへ。サービス業を含む都市機能の取り込み
- 主体の拡張。TMOから協議会へ
商業振興だけでは「まち」の振興はない、都市の魅力と活力を創り出すことではじめて振興が達成できるとの考えです。そして、「まちをつくる人」と「まちを使う人」との一体化を目指します。それをまとめる役割を「協議会」が果たします。
中心市街地の活性化が本当に必要かということを考える為には、次の4つの質問に答えてみることです。
- あなたのまちに中心市街地は必要ですか。
その理由。「選択と集中」に耐えられるか。市域全体の「均衡ある発展」との関係。 - 中心地はどこですか。
旧市街地か。これまでに中心市街地はなかったのか。公共施設や集客施設はすで郊外に移転してしまっていないか。将来郊外が新たな中心地になる可能性はないか。 - 中心市街地に商業は必要ですか。
その理由。あなたにとって都市の中心部とはどんなところか。商業に期待すること。中心部に商業がなければどんな支障があるか。 - 必要な場合、その商業者は既存の商業者ですか。(参入への対応)
その理由。現在の中心市街地とそこでの商業者に不満はないか。中心部の商業が全国的なチェーンで構成されると中心部の魅力は上がると思うか。
この質問に対する統一された答や正解といえるものはもちろんありません。それぞれの商店街が置かれている環境によって判断し解決していくことになります。但し事業展開にはリスクがつきものということを忘れないでください。「経済的なリスク」と「都市構造上のリスク」であり、これは将来の市民が背負うことになります。
他に、地権者との関係に留意が必要ですが、ここでは紙面の都合上省略します。結論としては双方が合意して協力し合って発展を求めるということです。
具体的な事例として次のものが紹介されました。
①ごみ処理作業の共同化によるコスト削減とまちの美化。熊本市(飲み屋の集積地)
ごみ処理からさらに他の分野の共同作業も試行
②商業活動、経済活動の停滞によって生じた遊休不動産の有効活用
東京都の家賃断層(*)が生じている地域。「家守(やもり)」(=地主に代わって家屋を管理する人)として老朽化、
空室化した不動産を活用したイベント企画。若者狙い
③ソフト事業の創出―楽しむ人が払う投資誘発の推進
広島県の商店街(空き店舗率60%)。目的ごとの協議会結成、パブリシティの活用
(*)「家賃断層がある」ということは、都市の中で一般の価格や近辺と比較して家賃がきわめて低くなっている地域が存在する状況をいう。「家賃断層地帯」というと、「 まちなかの低家賃エリア」を示す。
本稿執筆に当っては、当シンポジウムの講師による次の資料を参考にしました
『中心市街地の魅力を高めるために』
関西学院大学商学部教授 石原 武政
『経営改善プログラムの基本的な考え方(抜粋版)』
熊本城東マネジメント株式会社 木下 斉
『家守~不動産活用の真髄』
株式会社アフタヌーンソサイエティ代表取締役 清水 義次
『広島県呉市の取り組み』、『広島県府中市の取り組み』
マネジメントオフィスHARADA代表 中小企業診断士 原田 弘子