経営支援最前線(会員コラム)

第2回「中国」

「海外進出情報-アジアで生産する」
第2回 中国

  1. 進出先として中国が選ばれる理由
    第1回で取り上げた7か国の中で参考値とはいえ、中国への進出企業数は他の国への進出企業数よりも20~30倍と圧倒的に多い。皆さんの身の回りにも1社や2社は中国へ進出している企業があるだろう。また、海外へ進出するときに殆どの企業が進出候補国としてあるいは比較対象として中国を取り上げている。

    その理由の第1は人口の多さである。世界一の13億人の人口は日本の10倍以上に達する。豊富で安価な労働力が労働集約型産業にとっての魅力である。(ただし、現在は賃金水準が急速に上がり「安価」という特徴は薄れてきた。また、産業基盤も確立されてきたため、産業は労働集約型から資本集約型に移行してきている。)

    第2は日本からの近さである。お手元に東アジアの地図があれば開いてみていただきたい。福岡から見ると東京までの距離と中国の上海や青島への距離は同じぐらいであることに驚かれるだろう。一衣帯水というが東京から見ても福岡までの2倍の距離に中国の経済圏が広がっているのである。

    第3は1978年の改革開放以降の外資の受け入れでインフラや法制度などの整備が進み、進出の基盤がしっかりしてきていることである。

    これに関連するが第4に30年以上の外資導入の経験が生きて、部品や機器組立の集積が各地に形成されてきたことも大きい。当初は「安かろう、悪かろう。」であった現地部品の品質や技術レベルも高くなってきた。
    このようにしてみると、中国は今や「世界の工場」と呼ばれるが、特に日本からの近さの点で「日本の工場」的な色彩を帯びているといえるだろう。(ただし、所得水準、消費水準が上がったため市場としての魅力が強くなり現在は「世界一の市場」を目指して進出する企業も増えている。)
  2. 中国の国土と経済圏の成立
    中国の国土的特徴は、ロシア、カナダに次ぐ世界第3位の面積を持ち、南の赤道帯から北の寒温帯まで広がっている。西部は砂漠や山岳地帯となり主に少数民族の地区となる。

    経済的には東の沿岸部が発展を遂げ、内陸部は重慶・成都・西安などの地域を除くとあまり発展していない。このため沿岸部との経済格差が生じ、政治問題化している。

    戦後の中国が鄧小平の下で共産主義体制のまま外国資本の導入を認める「改革開放路線」を取ったのは1978年で、翌年まず深セン、珠海、厦門、汕頭に経済特区が設けられた。(のちに海南省が加わる。)輸出入関税の免除、所得税の3年間の据え置きなどの優遇処置がとられている。さらに1984年には上海、大連、天津、青島、広州等14の沿岸都市に「経済技術開発区」(経済特区が輸出優先で国内との流通が厳重に管理されていたのに対し経済技術開発区は国内にも開かれている。)が設けられた。
    このような施策によって経済が発展した結果、現在は4つの大きな経済圏が出現した。すなわち環渤海経済圏、長江デルタ経済圏、珠江デルタ経済圏、中西部経済圏である。

    画像出典:「中国まるごと百科事典」、筆者にて加工

  3. 経済圏の特徴
    それぞれの経済圏の特徴を表にして示す。各経済圏が日本一国並以上の人口を有していることに注目されたい。
    表1 中国各経済圏の特徴 (日系の企業数は中小企業庁作成資料による 2003年当時の数)
     経済圏 中心
    都市

    (省)
     人口
    (万人)
     特色  主な日系進出企業
     環渤海 大連
    瀋陽
    青島
    煙台
    北京
    天津
     17,210
    • 遼寧省は重工業が多い(国有重工業企業改革のための近代化と外資誘致の重点地域)
    • 石油資源や金属資源が豊富(原油生産量は全国の約40%、鉄鉱石は全国の約25%)
    • 大連は日系企業進出の歴史が古く幅広い業種の集積
    • 北京はハイテク企業の誘致に重点(北京・中関村を研究開発拠点に)
    • 天津の浜海新区を深?の経済特区、上海の浦東新区に次ぐ中国第三の国家レベルの新区に
    • 北京・天津はトップレベルの人材がそろう
    • 北京・天津地区は交通網等インフラが充実
    東芝、三菱電機、三洋電機、日本電産、キヤノン、マブチモーター、トステム、オムロン、ローム、東芝エレベーター、山之内製薬、パナソニック、日立、古河電気、NEC、NTT、富士通システム、資生堂、パナソニック電工、福田電子医療器械、ヤマハ電子楽器、エプソン
    (日系1,308社)
     長江
    デルタ
    上海
    江蘇
    浙江
     15,611
    • 浦東新区に外資誘導
    • 上海・蘇州・杭州などの華東地区は現在中小企業も含め日系企業の進出が最も多い
    • ビジネスインフラが整備されている
    • 日本を含め海外留学経験者が多い(日本語に精通している人材が多い)
    • 上海には過去、軽工業を中心とする製造業が育っている
    • 金融、商業の中心地かつ、国内最大の消費市場
    NEC電子、東芝、日立電器、京セラ電子、リコー、NTT、エプソン、パナソニック電工、ソニー、富士通、エプソン
    (日系2,451社)
     珠江
    デルタ
    広州
    深セン
    東莞
    珠海
     10,430
    •  経済開放の突破口となった地域で世界的な電子部品・電子機器組立の集積地に
    • 部品加工と委託加工の拠点
    • 香港との連携(香港に現地法人、珠江デルタに工場の例が多い)
    • 広東省には事務機、光学機器の産業集積
    エプソン、オリンパス、パナソニック、三菱電機、リコー、東芝、三洋電機
    (日系573社 但し委託加工が多いため実感としてはもっと多い))
     中西部  重慶
    成都
    西安
    10,925
    •  中国政府が沿岸と内陸部の格差是正のために最重点とする国家プロジェクト「中西部大開発」の中心地
    • 重慶は自動車・オートバイ生産、成都はハイテク関連、西安はソフト開発
    • 重慶は長江を使った物流
    本田発動機、三鈴六金クラッチ、電装実業、関西塗料
    (日系107社)

    主要都市の賃金は次のようになっている。急発展している上海の賃金が高いことが目立つ。

    表2 中国主要都市賃金 (JETRO資料 2010年データ、元→US$換算は2010年平均レートによる)
    地域名 瀋陽 大連 青島 北京 上海 広州 深セン
    ワーカー(一般職) 227 245 185 364 311 281 235
    エンジニア(中堅技術者) 366 417 344 415 609 530 530
    中間管理職(課長クラス) 778  762 650 840 1096 1,061 1,046

    なお、中国のGDPは年率10%前後という高い成長率を示し日本を抜いて世界第2位になったが、これに比例して物価が上昇し賃金も急上昇している。

  4. 進出時の留意事項
    いくつかの留意事項を挙げておく。
    • 工業団地
      中小企業が中国に進出する場合、親企業があるなら、その敷地や建物の一部を借りるという選択肢もあるが、そういうケースでなければインフラが整い、管理事務所もある工業団地に入るのが良いであろう。入居済の日系企業があれば各種の情報も期待できる。また、団地内の貸工場を利用するのも一法である。
      【註】日系大手商社が経営する工業団地もあり設立から運営までのサービスが得られる。
    • 優遇処置
      外資系企業のみを対象とした税制上の優遇措置を見直し、企業の所得税率を内外企業一本化とする法案が採択された(2008年1月1日より施行)。ただし、国内、国外企業を問わず研究開発型企業や低開発地域に進出する企業に対する税制などの優遇処置はある。
    • 企業設立時の投資
      投資総額の一定比率(投資総額により決まる。たとえば投資総額300万US$以下なら70%)以上を登録資本金として払い込まなければならない。(予定超過分を追加借入金で安易に補うことはできないことに注意。)
    • 対日感情
      対日感情は概して悪くないが政府に対する不満のはけ口が日本企業や日本人に向かうことがある。日ごろから従業員のみならず現地機関や現地人と良好な関係を築くことが重要である。

【参考資料】

  • JETROホームページ
  • 中国まるごと百科辞典
  • 2007年版中小企業白書
  • 中小企業の国際化診断着眼点 
    中小企業診断協会東京支部城西支会国際化コンサルティング研究会(2010年4月)
  • 中国経済の最新事情 同上 セミナー 才特国際株式会社 城島 由佳(2008年9月)
  • 生産適地比較(中国編) 同上発表資料 谷口 糺(2004年11月)

 


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